朝顔は日本の夏の代名詞ともいえる、親しみ深い植物です。
つるを伸ばしながら次々と咲く美しい花は、朝に開いて昼にはしぼむという儚い美しさも魅力の一つ。
豊富な花色と品種があり、グリーンカーテンとしての実用性も兼ね備えた、見た目と機能性を併せ持つ夏の定番植物です。
この記事では、朝顔の基本情報から栽培のコツ、活用方法まで詳しく解説します。
朝顔の基本情報と特徴

学名 | Ipomoea nil |
科名・属名 | ヒルガオ科・サツマイモ属 |
原産地 | 熱帯アジア・中央アメリカ |
分類 | 一年草 |
草丈 | 2〜3m以上(つる性) |
開花時期 | 7月〜9月 |
耐寒性 耐暑性 | 弱い 強い |
朝顔最大の魅力は、その名前通り朝に美しい花を咲かせ、昼にはしぼんでしまうという一日花の儚さです。
この短い花の命が、見る人に特別な感動を与えてくれます。
花色は青、紫、赤、白、ピンクを基調とし、絞り模様や覆輪、星咲きなど、実に多彩なバリエーションがあります。
江戸時代から品種改良が盛んに行われ、現在でも数百種類の園芸品種が存在します。
つる性植物として2〜3m以上に成長し、支柱やネットに絡ませることでグリーンカーテンとしても活用できます。
夏の強い日差しを遮りながら美しい花を楽しめる、まさに見た目と実用性を兼ね備えた植物といえるでしょう。
朝顔は古くから、「牽牛子(ケンゴシ)」という生薬に使用されていました。
しかし、その種にはファルビチンという強い毒性が含まれています。
種子1~2個で、下痢、腹痛が起きるとされ、大人で7粒程度食べてしまうと、強い排便を促す作用があると言われています。
引用元: 岡山県立図書館
朝顔の育て方の基本

置き場所 | 直射日光の当たる日当たりのいい場所 |
用土 | 水捌けと保水性のバランスのある用土 |
水やり | 1日朝・夕2回 |
肥料 | 開花シーズンには2週間に1回程度 つるボケ症状には注意をする |
朝顔の置き場所(日当たり・風通し)
朝顔は日当たりの良い場所を好む植物です。1日6時間以上の直射日光が理想的で、日照不足では花つきが極端に悪くなります。
風通しの良い環境も重要で、空気がよどむと病害虫の発生リスクが高まります。ただし、強すぎる風は茎を傷める可能性があるため、適度な風通しを心がけましょう。
ベランダや庭の南側、東側が最適な設置場所です。西日が強すぎる場所では、午後の強い日差しで葉が傷むことがあるため注意が必要です。
朝顔の用土の選び選び方
朝顔は水はけと保水性のバランスが取れた土を好みます。市販の草花用培養土をそのまま使用するのが最も手軽で確実です。
鉢植えの場合は、鉢底に軽石やゴロ土を入れて排水性を向上させます。自分で配合する場合は、赤玉土6:腐葉土3:川砂1の割合がおすすめです。
土のpH値は弱酸性から中性(6.0〜7.0)が適しています。極端に酸性やアルカリ性の土は避けてください。
朝顔の水やりの方法とタイミング
朝顔は乾燥に弱く、特に夏場は十分な水分が必要です。
真夏は朝夕の2回の水やりが基本となります。
朝の水やりは気温が上がる前の早い時間帯(午前6〜8時)に行い、夕方は日が傾いてから(午後5時以降)与えます。昼間の高温時の水やりは根を傷める原因となるため避けてください。
鉢植えでは土の表面が乾いたらたっぷりと与え、地植えでも晴天が続く場合は積極的に水やりを行います。
朝顔の肥料の与え方
朝顔の施肥で最も重要なのは、窒素分を与えすぎないことです。窒素過多になると葉ばかりが茂って花つきが悪くなる「つるぼけ」という現象が起こります。
理想的なのは、リン酸分が多めでバランスの良い肥料です。開花期には2週間に1回程度、液体肥料を規定濃度に希釈して与えます。
元肥として植え付け時に緩効性化成肥料を少量混ぜ込み、その後は開花を促すリン酸主体の肥料で管理することが成功の秘訣です。
朝顔の種まき・植え付け・支柱立て

朝顔の種まきの時期と方法
朝顔の種まきは5月上旬から中旬が適期で、地温が安定して20℃以上になってから行います。
寒い地域では5月下旬まで待った方が安全です。
朝顔の種は硬い種皮に覆われているため、発芽を促進する前処理が効果的です。
種皮にヤスリで軽く傷をつけるか、一晩水に浸けてから播種します。
種まきは直播きまたはポットまきで行います。
直播きの場合は株間30cm以上、ポットまきでは本葉2〜3枚で定植します。
覆土は種の2〜3倍程度とし、発芽まで乾燥させないよう注意します。
朝顔の植え付けと株間
苗の植え付けは本葉3〜4枚になった頃が適期です。
株間は最低30cm、グリーンカーテンとして使用する場合は20〜25cm間隔でも可能です。
植え付け時は根鉢を崩さずに丁寧に行い、植え付け後はたっぷりと水を与えて根付きを促します。
深植えは避け、苗の土の表面と同じ高さに植え付けることが重要です。
支柱・ネットの設置
朝顔のつるは右巻き(時計回り)に巻き上がる性質があります。
この性質を理解して支柱やネットを設置することが大切です。
あんどん仕立て | 3本の支柱を立て、上下2〜3段に輪を作る伝統的な方法。和風の趣があり、鉢植えに最適です。 |
ネット仕立て | 縦横に格子状のネットを張る方法。グリーンカーテンとして最も効果的で、広い面積をカバーできます。 |
支柱やネットは、つるが伸び始める前(草丈20cm程度)に設置することが重要です。
朝顔の季節ごとの管理方法

春(5月ごろ) | 種まきの適期 |
夏(6〜8月) | 成長シーズンでもあり、開花シーズン 水やりを朝晩忘れずに行いましょう。 成長が鈍化していたら、肥料も与える。 |
秋(9〜10月) | シーズンは終わっていますが花を咲かせてくれます。 来年の種を取るのもおすすめです。 |
冬(11〜4月) | 一年草のため、寒くなると枯れてしまいます。 株の撤去したり、種は冷暗所で保管 |
春(5月)の管理
種まきと芽出し、定植の重要な時期です。気温が安定してから種をまき、発芽後は適度な間引きを行います。支柱やネットの準備も忘れずに行いましょう。この時期の管理が夏の成長と開花を左右するため、丁寧な作業を心がけます。
夏(6〜8月)の管理
最も活発に成長し、開花する時期です。つるの誘引をこまめに行い、理想的な形に仕立てます。朝夕の水やりは欠かせず、咲き終わった花がらは種を取らない場合は摘み取ります。この時期の管理により、秋まで美しい花を楽しめます。
秋(9〜10月)の管理
開花のピークは過ぎますが、まだ花を楽しめる時期です。種を採取したい花は花がらを摘まずに残し、完熟するまで待ちます。気温の低下とともに生育も緩慢になるため、水やりの頻度も調整します。
冬の管理
一年草のため、霜が降りると枯れてしまいます。種の採取が終わったら株を撤去し、支柱やネットを片付けて来年の準備をします。採取した種は乾燥した冷暗所で保存し、翌年の栽培に備えます。
朝顔に発生しやすい病害虫とその対策

朝顔の主な病気
- うどんこ病
- 立ち枯れ病
うどんこ病は葉の表面に白い粉状のカビが発生する病気です。風通しが悪い環境で発生しやすく、特に梅雨時期に注意が必要です。
立ち枯れ病は土壌中の病原菌により根や茎の基部が腐敗する病気です。過湿や連作により発生しやすくなります。
予防には適切な株間の確保と風通しの改善が効果的です。発病した場合は、病気の部分を早めに除去し、殺菌剤を使用します。
朝顔の主な害虫
- アブラムシ
- ハダニ
- ヨトウムシ
アブラムシは新芽や蕾に群生し、植物の汁を吸います。早期発見が重要で、見つけたらシャワーで洗い流すか殺虫剤を使用します。
ハダニは葉の裏に寄生し、葉を黄変させます。乾燥した環境で発生しやすいため、葉水を与えることで予防できます。
ヨトウムシは夜間に葉を食害する害虫です。被害を見つけたら夜間に懐中電灯で探し、手で捕殺するか殺虫剤を使用します。
病害虫の対策のポイント
日頃から葉の裏側まで注意深く観察し、異常を早期発見することが重要です。
混み合った部分は適度に間引いて風通しを良くし、病害虫の発生を予防しましょう。
有機農薬や天敵昆虫の活用も効果的で、環境に優しい栽培が可能です。
朝顔のよくあるトラブルと対処法

トラブル①葉ばかり茂って花が咲かない
原因:肥料の窒素分過多が最も多い原因です。窒素が多すぎると栄養成長が優先され、花芽の形成が抑制されます。
対処法:窒素分の少ない肥料に切り替え、リン酸主体の肥料を与えます。既に窒素過多の状態になっている場合は、一時的に肥料を中断し、リン酸とカリウムのみを補給します。
トラブル②つるがからまない・伸びすぎる
原因:誘引不足や支柱・ネットの設置が不適切な場合に起こります。朝顔のつるは自然に巻き上がりますが、方向を調整する必要があります。
対処法:こまめにつるの巻きつけ方向を調整し、理想的な形に誘引します。伸びすぎたつるは適度に摘心して分枝を促すことも効果的です。
トラブル③花がすぐしぼむ
原因:これは朝顔の正常な性質で、トラブルではありません。朝顔は一日花で、朝に開いた花は昼頃にはしぼんでしまいます。
対処法:特別な対処は不要です。毎日新しい花が咲くため、継続的に花を楽しめます。より長時間楽しみたい場合は、朝の涼しい時間帯に鑑賞することをおすすめします。
朝顔のおすすめの品種やバリエーション

西洋朝顔(ヘブンリーブルー)
大輪で澄んだ空色の花が美しい西洋系の品種です。日本の朝顔よりも花が大きく、秋遅くまで咲き続ける特徴があります。つるの伸長力も強く、グリーンカーテンとしても優秀です。花色の美しさから切り花としても人気があります。
曜白朝顔
花びらの中央から外側に向かって白いライン(曜)が入る、和朝顔の代表的な品種です。このコントラストが非常に美しく、和風の庭園によく映えます。青系、紫系、赤系など基本色のバリエーションがあり、どれも上品な印象を与えます。
変化朝顔
江戸時代から続く伝統園芸の朝顔で、葉や花の形が通常とは大きく異なるユニークな品種群です。獅子咲き、采咲き、牡丹咲きなど花形に変化があるものや、もみじ葉、柳葉など葉形に変化があるものがあります。園芸的価値が高く、コレクターにも人気があります。
琉球朝顔
多年草として扱える宿根性の朝顔で、温暖な地域では冬越しが可能です。つるの伸長力が非常に強く、グリーンカーテンとして最適です。花は青紫色で、夏から秋まで長期間咲き続けます。一度植えれば数年間楽しめるのが大きな魅力です。
朝顔の楽しみ方

グリーンカーテンとして活用
朝顔のグリーンカーテンは、夏の節電対策としても注目されています。窓の外側にネットを設置し、朝顔を這わせることで、室内の温度を2〜3℃下げる効果があります。
設置場所は南側または西側の窓が効果的で、窓から1m程度離して設置すると風通しも確保できます。美しい花を楽しみながら涼しく過ごせる、まさに一石二鳥の活用法です。
子どもの自由研究材料として
朝顔は成長が早く、変化が分かりやすいため、子どもの観察学習に最適です。種まきから開花まで約2〜3ヶ月で完結するため、夏休みの自由研究にぴったりです。
成長記録、開花時間の観察、花の構造の研究など、様々な角度から学習できます。親子で一緒に育てることで、植物への興味や愛情を育むことができます。
盆栽仕立て・あんどん仕立て
あんどん仕立ての朝顔は、江戸時代から続く日本の伝統的な楽しみ方です。3本の支柱に2〜3段の輪を作り、つるを螺旋状に巻き上げて仕立てます。
この方法では、限られたスペースでもたくさんの花を楽しめ、和風の趣を演出できます。朝顔市などのイベントで見かける伝統的な形で、玄関先や庭の一角に置けば風情のある景観を作り出せます。
朝顔の栽培Q&A

- Q朝顔を毎年咲かせるにはどうすればよいですか?
- A
朝顔は基本的に一年草なので、毎年種を採取して翌年まき直す必要があります。
種を採取する際は、花がらを摘まずに実を完熟させ、茶色くなったら収穫します。
乾燥した冷暗所で保存し、翌年の5月にまき直してください。
琉球朝顔のような多年草タイプもありますが、寒冷地では冬越しが困難です。
- Q肥料はどのようなものを選べばよいでしょうか?
- A
開花期はリン酸分が多めの肥料が理想的です。
「花用」や「開花促進」と表示された肥料を選ぶと良いでしょう。
窒素分が多すぎると葉ばかり茂って花が咲かない「つるぼけ」という現象が起きるため、バランスに注意してください。
液体肥料なら1000倍希釈で2週間に1回程度が目安です。
- Q支柱はどのように立てればよいですか?
- A
一般的なのは「あんどん仕立て」と「ネット仕立て」です。
あんどん仕立ては3本の支柱を三角形に立て、上下2〜3段に輪を作ります。
ネット仕立ては垂直にネットを張り、つるを絡ませます。
どちらもつるが伸び始める前(草丈20cm程度)に設置することが重要です。
朝顔のつるは右巻き(時計回り)に巻くことを覚えておくと誘引がスムーズです。
朝顔の豆知識や名前の由来

名前の由来
「朝顔」という名前は、その名の通り「朝に咲いて昼にしぼむ」という花の特性に由来しています。
古くは「朝顔花(あさがおばな)」と呼ばれ、万葉集にも登場する歴史ある植物です。
英名では「Morning Glory(モーニング・グローリー)」と呼ばれ、やはり朝の美しさを表現した名前がつけられています。
この呼び方は世界共通で、朝顔の特徴を端的に表しています。
ちなみに、朝顔があるということは、昼顔、夕顔もあります。
朝顔の花言葉は?
朝顔の花言葉は
「愛情の絆」
「はかない恋」
「結びつき」
などです。
これらは朝顔のつるが支柱に絡みつく様子と、一日で散る花の儚さから生まれました。
「愛情の絆」は、つるが支柱にしっかりと絡みつく様子から、「はかない恋」は美しく咲いても一日で散ってしまう花の性質から来ています。
この相反する意味を持つところも、朝顔の魅力の一つといえるでしょう。
日本の伝統園芸としての歴史
朝顔は江戸時代に空前の園芸ブームを巻き起こしました。
特に文化・文政期(1804〜1830年)には「変化朝顔」と呼ばれる奇形の朝顔が大流行し、一つの花に現在の価値で数百万円という高値がつくこともありました。
現在でも「変化朝顔」の栽培は続けられており、日本独特の園芸文化として受け継がれています。
九州大学や京都府立植物園などでは、伝統的な変化朝顔の保存・研究が行われています。
朝顔のまとめ|年間栽培スケジュールとポイント早見表
月 | 主な作業内容 |
---|---|
5月 | 種まき・定植・支柱設置の重要な時期。地温が20℃以上になってから作業を開始します。 |
6〜8月 | つる誘引・開花・水やり・花がら摘みの最も忙しい時期。朝夕の水やりは欠かせません。 |
9月 | 継続した開花管理と種の採取準備。来年用の種を選別して採取します。 |
10月以降 | 株の片付け・支柱やネットの収納。採取した種は冷暗所で保存します。 |
朝顔栽培の成功には、十分な日光とたっぷりの水が欠かせません。
特に夏場の水切れは致命的になるため、朝夕の水やりを習慣化することが重要です。
肥料については窒素分を控えめにし、リン酸多めの配合を心がけることで、葉ばかりが茂る「つるぼけ」を防ぐことができます。
開花を重視した施肥管理が美しい花を咲かせる秘訣です。
支柱やネットは早めに設置し、つるをこまめに誘引することで理想的な形に仕立てられます。
朝顔の右巻きの性質を理解して誘引すると、作業がスムーズに進みます。
夏の花壇やベランダを鮮やかに彩る朝顔は、初心者でも比較的育てやすい定番植物です。
グリーンカーテンとしての実用性も高く、美しさと機能性を兼ね備えた理想的な夏の植物といえるでしょう。
毎日朝に咲く新しい花を楽しみながら、充実したガーデニングライフをお過ごしください。
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