ナスは日本の夏を代表する野菜であり、家庭菜園でも人気の高い作物です。
一度植えれば長期間収穫できる点や、様々な料理に活用できる汎用性の高さから、初心者からベテランまで多くの家庭菜園愛好家に愛されています。
この記事では、プランターでのナス栽培に焦点を当て、苗の選び方から収穫までの全プロセスを詳しく解説します。
ナスの基本知識
ナスの特徴
ナスは茄子科ナス属の一年草で、原産地は東南アジアとされています。
日本では古くから栽培され、様々な品種が存在します。
特徴的な紫黒色の果実は実際には「果実」であり、野菜として食べられています。
栄養価と効能
ナスには食物繊維やポリフェノールが豊富に含まれており、特に果皮に含まれるナスニンという紫色の色素は抗酸化作用があると言われています。
また、カリウムも豊富で、むくみ防止や高血圧予防に役立つとされています。
低カロリーでヘルシーな食材としても注目されています。
項目 | 内容 |
---|---|
栽培難易度 | ★★☆☆☆(比較的簡単) |
日照条件 | 日なた(6時間以上の直射日光が理想) |
水やり頻度 | 多め(特に夏場は朝晩2回) |
栽培期間 | 苗植え付けから約3〜4ヶ月 |
収穫時期 | 7月中旬〜10月下旬 |
適正温度 | 20〜30℃(15℃以下になると生育が鈍る) |
植え付け適期 | 4月中旬〜5月下旬(地域による) |
株間の距離 | プランター1つにつき1株が基本 |
ナスの家庭菜園メリット

ナスの家庭菜園の魅力①高収穫量
ナスは上手く育てると、畑の場合は、一株から100本以上収穫することができ、コストパフォーマンスが高い野菜です。
プランター栽培の場合は、多くても50本ほど収穫できるばあいがあります。
ナスの家庭菜園の魅力②長期収穫
ナスは、夏野菜ですが秋ナスが美味しいと言われているぐらい収穫できる期間が長いことで知られています。
適切に管理すれば7月から10月頃まで長期間収穫可能ですよ。
ナスの家庭菜園の魅力③料理の多様性
ナスを使った料理と言えば、焼きナス、揚げ浸し、天ぷら、和物など様々な料理に活用することができます。
料理が好きな方やこれから料理スキルを身につけていきたいという方にもおすすめの野菜です。
ナスの家庭菜園の魅力④病害虫への抵抗力
ナスは連作障害、肥料切れ、水切れなどを気をつければ、育てやすい野菜の一つです。
そのため、初心者でも比較的簡単に育てることができる野菜の一つです。
ナスの栽培時に準備するもの
必ず必要な道具・資材
ナスの苗 1株orタネ
初めて育てる方は、苗から育てることをおすすめします。
タネ方が安いため、コスパを重視する方は、種子からでも育てることができます。
大きめのプランター(深さ30cm以上、幅30cm以上が理想)
ナスを元気に育てるためにはそれなりの広さが必要になります。
プランターで、深さ30cm以上、幅30cm以上に対して1株が理想とされています。
鉢植えだと、10号に1株ほどとされています。
畑であれば、株間は50〜60cmほど空ける必要があります。
野菜用培養土 約15〜20リットル
ホームセンターに売っている野菜用の培養土で十分です。
しかし、ナスをより多く収穫したいのであれば、肥料が沢山必要です。
培養土に入っている肥料分では少ないため、元肥も入れるようにしましょう。
元肥(緩効性の化成肥料)
土1Lに対して1gの化学肥料が必要だと言われています。
10号鉢だと8gほどになります。
鉢底石または軽石 プランターの底に2〜3cm敷く分
水捌けを良くするために必要になります。
水捌けをよくすると、根腐れなどの病気の予防になります。
あると便利な道具・資材
追肥用の肥料(液体肥料または粒状肥料)
ナスは肥料が多く必要です。
追肥を与えた方が収穫数が増えたり大きく育つので、収穫シーズンに入ると与えるようにしましょう。
支柱(高さ120〜150cm)
ナスの株は大きく育ちます。
そのため、強風が吹くと、ポキッと折れてしまう可能性があるため、支柱を立てて折れないようにしましょう。
ジョウロ
ジョウロで株元に水をゆっくり与えて、水の跳ね返りを防止することで病気の予防にもつながります。
麻ひもや支柱用クリップ
株を支柱に縛ったり、支えにしたりするときに必要になります。
剪定ばさみ
剪定や、脇芽を積むときにあると、便利です。
手で摘み取ることもできますが、ハサミで切る方が、病気の予防になります。
初心者におすすめの品種
家庭菜園向けの代表的なナスの品種をいくつか紹介します。
- 千両二号: 最も一般的な品種。安定した収穫量で初心者向け
- 黒陽: 果皮が特に黒く艶やかで、果肉が柔らかい
- 庄屋大長: 長ナスの代表品種。煮物や漬物に向いている
- 米ナス: 小ぶりで柔らかく、油との相性が良い
- 水ナス: 水分が多く、生食や浅漬けに最適
プランター栽培であれば、比較的コンパクトに育つ「千両二号」や「黒陽」などがおすすめです。
ナスの栽培の手順
① 苗の選び方と購入時のポイント
良い苗を選ぶことが成功の第一歩です。ホームセンターや園芸店で以下のポイントを見て選びましょう。
- 茎の太さと強さ
茎が太く、直立しているものを選ぶ - 葉の状態
葉の色が濃く、艶があり、病気や虫食いの跡がないもの - 節間の距離
節と節の間が詰まっているもの(徒長していない) - 本葉の枚数
6〜8枚程度の本葉があるもの(あまり若すぎると定植後の生育が遅れる) - 花の有無
できれば花がまだついていない、または少ないもの(早すぎる結実は株の成長を妨げる)
購入後はすぐに植え付けるのが理想ですが、すぐに植えられない場合は、半日陰で水を切らさないよう管理しするといいですよ。
② 植え付けの準備と方法
プランターと土の準備
- プランターの底に排水用の穴があることを確認(水はけが重要)
- 鉢底ネットを敷き、その上に鉢底石を2〜3cm敷く
- 野菜用培養土に元肥(緩効性肥料)を混ぜる
- 土15リットルに対して緩効性肥料を約30〜50g
- 準備した土をプランターに8分目まで入れる
苗の植え付け手順
- 苗を植える位置に穴を掘る(根鉢より一回り大きめに)
- 苗をポットから優しく取り出す(根を傷つけないよう注意)
- 根鉢はあまり崩さずに、表面の土を少しほぐす程度にする
- 植え穴に苗を置き、周囲に土を入れて軽く押さえる
- 株元から2〜3cm離れた位置に支柱を立てる
- 植え付け後は十分に水を与える(プランターの底から水が出るまで)
植え付ける時の注意点
- 深植えはしない(根元が土に埋まるとうまく育たない)
- 支柱は早めに立てておく(後から立てると根を傷める)
- 定植直後は直射日光を避け、2〜3日は半日陰で管理する
③ 日常の水やり
ナスは水を好む野菜です。特に以下のポイントに注意して水やりを行いましょう:
水やりの基本
- 頻度: 生育期は基本的に朝晩の2回
- 量: プランターの底から水が流れ出るくらいたっぷりと
- タイミング: 朝は日の出前後、夕方は日が傾いてから(葉が濡れたまま強い日差しに当たると葉焼けの原因に)
時期による水やりの調整
- 定植直後: 土が乾かないよう特に注意深く管理
- 夏場: 特に水切れに注意し、場合によっては昼間にも水やりが必要
- 秋口: 気温が下がってきたら朝1回の水やりに減らす
水やりのコツ
- 土の表面が乾いたら必ず水やり(指で2〜3cm程度土に入れてみて、乾いているか確認)
- 水やりはできるだけ株元に、葉にはかからないように
- 長期不在時は底面給水システムを検討するか、知人に依頼を
④ 支柱立てと整枝(誘引と摘心)
ナスは成長すると背丈が高くなり、実も付くため支柱が必須です。また、計画的な整枝で風通しを良くし、収穫量を増やしましょう。
支柱と誘引の方法
- 120〜150cmの支柱を株の近くに立てる
- 主枝を麻ひもや専用クリップで8の字結びにして固定
- 成長に合わせて定期的に誘引を続ける(茎が太くなると自重で折れる可能性がある)
整枝の基本(3本仕立て)
- 最初の花(一番花)の下から出る2本のわき芽を残す
- この2本と主枝の計3本を育て、それ以外のわき芽は早めに摘み取る
- 3本の枝それぞれにも脇芽が出るが、これらも早めに摘み取る
- 地際から出る芽(吸い枝)は必ず取り除く
葉の管理
- 日光が株全体に当たるよう、込み合った葉や黄ばんだ葉は適宜摘み取る
- 特に株の中心部は風通しを良くするために葉を間引く
- ただし、強い日差しから果実を守るために必要な葉は残す
⑤ 肥料管理(追肥の方法)
ナスは栄養を多く必要とする野菜です。適切な追肥で長期間の収穫を維持しましょう。
追肥のタイミング
- 植え付けから約3週間後に1回目の追肥
- その後は10日〜2週間に1回のペースで定期的に
追肥の方法
- 液体肥料の場合:
- 水やり代わりに薄めた液体肥料を与える(1000倍〜2000倍に希釈)
- 葉面散布も効果的(特に微量要素の補給に)
- 固形肥料の場合:
- 株元から10cm程度離れた位置に円を描くように置く
- 軽く土に混ぜ、その後水やりをする
肥料の選び方
- 生育初期: 窒素・リン酸・カリウムのバランスが取れた化成肥料
- 果実肥大期: カリウムを多く含む肥料(実の品質向上に効果的)
- 有機肥料(堆肥や油かすなど)と化学肥料を併用するとより効果的
⑥ 収穫の時期と方法
適切なタイミングで収穫することで、果実の味と株の持続的な生産性を保てます。
収穫の目安
- 大きさ: 品種にもよるが、一般的には7〜10cm程度
- 外観: 果皮にツヤと張りがある状態
- タイミング: 完熟する前(ツヤがある程度で収穫するのがコツ)
収穫方法
- 鋭利なハサミを使い、ヘタの上1〜2cmの部分で切り取る
- 手でもぎ取ると茎が傷つく可能性があるためハサミ使用を推奨
- 早朝または夕方の涼しい時間帯に収穫するのが理想的
収穫のコツ
- 早めに収穫することで株への負担が減り、次の実の成長を促す
- 収穫後すぐに水やりをして株を回復させる
- 大きくなりすぎた実は早めに摘み取る(種が多くなり食味が落ちる)
ナスの病害虫対策

ナスは比較的丈夫な野菜ですが、いくつかの病害虫には注意が必要です。
主な害虫とその対策
害虫名 | 症状 | 対策 |
---|---|---|
アブラムシ | 新芽や葉の裏に小さな緑や黒の虫が集団でつく | 発見次第、水で強く洗い流す 初期段階なら希釈した中性洗剤スプレーで駆除 被害が大きい場合は園芸用殺虫剤(オルトラン、ベニカなど)を使用 |
ハダニ | 葉の裏に極小の赤や黄色の虫がつき、葉が白っぽく変色 | 葉の裏に水を噴霧して湿度を上げる(ハダニは乾燥を好む) 被害葉は早めに摘み取って処分 重症の場合は殺ダニ剤の使用を検討 |
コナジラミ | 白い小さな虫が葉の裏につき、白い粉のようなものが付着 | k |
ナスの主な病気と対策
うどんこ病

- 症状: 葉の表面に白い粉をふいたような状態になる
- 対策:
- 風通しを良くする(過密状態を避ける)
- 被害葉を早めに摘み取る
- 重症の場合は殺菌剤を使用
灰色かび病

- 症状: 茎や果実に灰色のカビが発生
- 対策:
- 湿度を下げる(風通しを良くする)
- 被害部位を早めに切り取って処分
- 予防として銅剤などの殺菌剤を使用
青枯病

- 症状: 株全体が急に萎れ、回復しない
- 対策:
- 残念ながら治療法はなく、発症したら株ごと抜き取って処分
- 翌年は同じ場所でナス科の野菜を栽培しない
- 予防として連作を避け、水はけの良い土づくりを心がける
- 土壌菌が原因なので、観世に防ぐのは不可
- 傷口から感染するため、できる限り傷をつけないようにする
病気の予防のコツ
- 定期的に株の状態をチェックし、異常を早期発見する
- 適切な間隔で植え、風通しを確保する
- 過湿・過乾燥を避け、適切な水管理する
- 栄養バランスの取れた肥料管理(特に窒素過多に注意)
- 水はねや植物に傷をつけないように注意する
ナスの栽培成功のための10のコツ
- 適切なプランターサイズを選ぶ: 容量10リットル以上、深さ30cm以上が理想
- 水切れを絶対に避ける: 特に夏場は朝晩の水やりを欠かさない
- 早期の支柱設置: 苗の植え付けと同時に支柱を立てることで根を傷めない
- 計画的な整枝: 3本仕立てを基本とし、不要な脇芽は早めに摘む
- 適切なタイミングでの収穫: 完熟前のツヤのある状態で収穫
- 定期的な追肥: 10日〜2週間に1回のペースで栄養補給
- 風通しの確保: 込み合った葉や枝は適宜整理する
- 病害虫の早期発見と対処: 特に葉の裏のチェックを習慣に
- 適度な日照: 最低でも6時間以上の日光が当たる場所で育てる
- 収穫後のケア: 収穫後は水やりと追肥で株を回復させる
ナスの収穫後の保存と活用
新鮮なナスの保存方法
- 常温: 2〜3日程度なら常温で保存可能(ヘタを上にして置く)
- 冷蔵: 新聞紙で包んでポリ袋に入れ、野菜室で5〜7日保存可能
- 冷凍: 下処理(塩もみや下茹で)をしてから冷凍すると長期保存可能
おすすめの調理法
- 焼きナス: 直火やグリルで皮目に焼き色をつけ、皮を剥いて薬味と醤油で
- 揚げ浸し: 素揚げしてだし汁に浸す伝統的な一品
- 麻婆茄子: 中華の定番。ひき肉と豆板醤で味付け
- ラタトゥイユ: トマトやズッキーニと一緒に煮込む南フランスの郷土料理
- グリルサンドイッチ: スライスしたナスをグリルし、チーズなどと一緒にサンドイッチに
詳しい料理のレシピはこちらの「takuneko料理blog」でご紹介しています。
ナスのシーズン終了後の処理
株の処分方法
- 最後の収穫を終えたら、株元から切り取る
- 根は土中の養分となるので、可能であれば土に残しておく
- 病気がひどかった場合は根まで掘り起こして処分する
土の再利用
- ナスの栽培後の土はそのままでは連作障害を起こす可能性がある
- 再利用する場合は以下のいずれかの方法で:
- 新しい培養土と1:1程度で混ぜる
- 堆肥や腐葉土を混ぜて数ヶ月寝かせる
- 翌年はナス科以外の野菜(葉物野菜など)を栽培する
これらの処理をすることで、古い用土も使うことができます。
詳しい土のリサイクル方法は、「古い土を再利用する方法」をご覧ください。
来年のための計画
連作を避ける
ナスを含むナス科植物(トマト、ピーマンなど)は連作障害を起こしやすいため、同じ土での連続栽培は避けましょう。理想的なローテーションは以下の通りになります。
- 1年目ナス科
トマトやナスなど
- 2年目豆科
枝豆や落花生など
- 3年目瓜科
きゅうりやズッキーニなど
- 4年目アブラナ科
小松菜やカブなど
来シーズンの改善ポイント
今シーズンの栽培経験を振り返り、以下のような点を記録しておくと来年に活かせます。
- 使用した品種の特性と収穫量
- 病害虫の発生状況と効果のあった対策
- 肥料の種類と効果
- 水やりの頻度と株の反応
- 収穫のタイミングとサイズ
まとめ
ナスは適切な管理さえすれば、家庭菜園でも比較的育てやすく、長期間にわたって収穫を楽しめる野菜です。水切れに注意し、定期的な追肥と適切な整枝を行うことが成功の鍵となります。
初心者の方は特に「水やり」と「支柱・整枝」のポイントを押さえることで、美味しいナスの収穫を目指しましょう。
一度の成功体験が次へのモチベーションにつながります。
失敗しても諦めず、経験を積み重ねることで、やがてナス栽培のコツをつかめるようになるでしょう。家庭で育てた新鮮なナスの味は格別です。
ぜひこのガイドを参考に、ナス栽培にチャレンジしてみてください。
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