金魚が泳いでいるような愛らしい花形と、鮮やかで豊富な花色が魅力のキンギョソウ。
春から秋まで長期間にわたって次々と花を咲かせ、花壇を華やかに彩ってくれる人気の園芸植物です。
海外では「スナップドラゴン」の名前でも親しまれ、花を横から軽く押すと金魚が口をパクパクと動かすような仕草を見せる愛らしさが子供たちにも人気があります。
高性種から矮性種まで草丈のバリエーションが豊富で、用途に応じて選ぶことができます。
比較的育てやすく、切り花としても優秀な性質は、ガーデニング初心者からベテランまで幅広く愛される理由です。
地中海沿岸原産でありながら日本の気候にも良く適応し、現在では数多くの園芸品種を楽しむことができます。
今回はそんなキンギョソウについてご紹介します。
キンギョソウの基本情報
項目 | 内容 |
---|---|
学名 | Antirrhinum majus |
科名・属名 | オオバコ科 / キンギョソウ属 |
原産地 | 地中海沿岸地域 |
分類 | 一年草・多年草(寒冷地では一年草扱い) |
草丈 | 15cm〜120cm程度(品種による) |
花期 | 4月〜11月(品種により異なる) |
播種時期 | 3月〜4月、9月〜10月 |
植え付け時期 | 4月〜5月、10月〜11月 |
耐寒性・耐暑性 | やや弱い(0℃程度まで) / やや弱い |
キンギョソウの魅力と特徴
キンギョソウは地中海沿岸原産のオオバコ科の植物で、独特の花形と豊富な花色で古くから親しまれています。
最大の魅力は、その名前の由来となった金魚のような愛らしい花形にあります。
2枚の上唇と3枚の下唇からなる唇形花で、横から見ると金魚が口を開けているように見えることから「キンギョソウ(金魚草)」と名付けられました。
花色は非常に豊富で、赤、ピンク、白、黄色、オレンジ、紫など単色のほか、複色やグラデーションを持つものまで多彩な品種があります。
花は穂状に密に付き、下から上へと順次咲き上がっていきます。
草丈により高性種(60〜120cm)、中性種(30〜60cm)、矮性種(15〜30cm)に分類され、用途に応じて選択できます。
高性種は切り花や花壇の背景に、矮性種は鉢植えや花壇の前景に適しています。
葉は細長い楕円形で互生し、濃い緑色をしています。茎は直立し、しっかりとした株姿を保ちます。
春播きでは夏〜秋に、秋播きでは春〜初夏に開花し、適切な管理により長期間花を楽しむことができます。
切り花としても人気が高く、花持ちが良いのも魅力の一つです。
キンギョソウに毒はあるの?
キンギョソウは一般的に毒性は低いとされていますが、植物全体に軽微な有毒成分が含まれている可能性があります。
特に種子には注意が必要で、大量摂取は避けるべきです。
観賞用として楽しむ分には問題ありませんが、小さなお子様やペットが誤って摂取しないよう注意してください。
切り花として室内に飾る際も、ペットが花や葉を食べないよう配置に気を付けましょう。
異常を感じた場合は、速やかに医師や獣医師に相談してください。
キンギョソウの育て方
項目 | 内容 |
---|---|
置き場所 | 日当たりの良い風通しの良い場所 |
用土 | 水はけが良く肥沃な中性〜弱アルカリ性土壌 |
水やり | 土の表面が乾いたらたっぷりと |
肥料 | 植え付け時と開花期に緩効性肥料と液肥 |
キンギョソウの置き場所
日当たりの良い場所が最適です。
1日6時間以上の直射日光を受ける場所を選びましょう。日照不足では徒長して花付きが悪くなります。風通しの良い場所を選ぶことで、病気の発生を防ぎ、健全な生育を促すことができます。夏の猛暑時は午後の強い西日を避けることで、夏越しが容易になります。寒冷地では霜の当たらない南向きの暖かい場所を選び、必要に応じて防寒対策を行います。
キンギョソウにおすすめの用土
水はけが良く、有機質に富んだ肥沃な土壌を好みます。
pH6.5〜7.5の中性から弱アルカリ性の土壌が理想的です。
市販の草花用培養土や、赤玉土、腐葉土、バーミキュライトを5:3:2の割合で混合した用土が適しています。
地植えの場合は、植え付け前に堆肥や腐葉土をたっぷりと混ぜ込んで土壌改良を行います。
酸性土壌では石灰を施して中和し、粘土質の場合は軽石やパーライトを混ぜて排水性を改善します。
キンギョソウの水やり
土の表面が乾いたらたっぷりと水を与えます。
特に生育期の春から秋にかけては、水切れに注意が必要です。
朝の涼しい時間帯に、株元にたっぷりと与えましょう。
過湿は根腐れや病気の原因となるため、水はけの良い環境を保つことが大切です。
花や葉に水がかかると病気の原因になることがあるため、株元に直接与えるのがポイントです。
冬季は水やりの頻度を減らし、土が乾き気味になってから与えるようにします。
キンギョソウの肥料は?
植え付け時に元肥として緩効性化成肥料を土に混ぜ込みます。
生育期間中(4月〜10月)は月1〜2回、薄めの液体肥料を与えると花付きが良くなります。
特に開花期間中は定期的な追肥が重要で、リン酸とカリウムを多く含む肥料を選ぶと花色が鮮やかになります。
窒素過多は徒長の原因となり、花付きが悪くなるため、バランスの良い肥料を適量施すことが大切です。
キンギョソウの植え付け・植え替え・増やし方
キンギョソウの植え付けに適した時期は、
春播きの場合は4月〜5月、
秋播きの場合は10月〜11月です。
苗を購入した場合は、根鉢を軽くほぐして植え付け、植え付け後はたっぷりと水を与えます。
鉢植えの場合は、根詰まりしたら一回り大きな鉢に植え替えを行います。
多年草として扱う場合は、年1回程度の植え替えが必要です。
キンギョソウの増やし方
キンギョソウを増やす方法は「種まき」「挿し芽」があります。
種まき | 3〜4月または9〜10月に行う。 発芽適温は15〜20℃で、 播種後1〜2週間で発芽する。 |
挿し芽 | 5〜6月に若い茎を7〜10cm程度に切り、 挿し芽用土に挿す。 2〜3週間で発根する。 |
条件が良ければ自然にこぼれた種から翌年芽吹くことがあるぐらい丈夫な植物なので、
初心者の方にもおすすめの植物です。
キンギョソウの季節ごとの管理方法
季節 | 管理ポイント |
---|---|
春(3〜5月) | 種まき・植え付け・摘心・施肥・支柱立て |
夏(6〜8月) | 開花・水やり・病害虫対策・花がら摘み・夏越し管理 |
秋(9〜11月) | 継続開花・種まき・株分け・施肥・防寒準備 |
冬(12〜2月) | 防寒・水やり調整・翌年の準備・種の保存 |
キンギョソウに発生しやすい病害虫とその対策
キンギョソウに発症しやすい病気
うどんこ病: 葉に白い粉状のカビが発生。風通しを良くし、専用殺菌剤で予防・治療。
灰色かび病: 高温多湿時に花や葉が腐る。感染部位を早めに除去し、風通しを改善。
べと病: 葉に黄色い斑点ができ、裏側に白いカビが発生。水やりを株元のみにし、殺菌剤で対処。
キンギョソウに発生しやすい害虫
アブラムシ: 新芽や茎に発生し、ウイルス病を媒介することもある。見つけ次第駆除し、定期的な薬剤散布を行う。
ハダニ: 乾燥した環境で葉裏に発生。葉水を与えて予防し、発生時は殺ダニ剤で対処。
ヨトウムシ: 夜間に葉や花を食害。夜間の見回りと薬剤散布で対処。
キンギョソウによくあるトラブルと対処法
トラブル①花が咲かない
日照不足、窒素過多、種まき時期の不適切が原因です。
日当たりを改善し、リン酸肥料を施し、適期に種まきを行いましょう。
トラブル②茎が倒れてしまう
高性品種で支柱不足、風当たりが強い、水のやりすぎによる軟弱徒長が考えられます。
適切な支柱を立て、水やりを調整しましょう。
トラブル③葉が黄色くなる
水のやりすぎ、根詰まり、肥料不足が原因です。
排水性を改善し、植え替えや施肥を検討しましょう。
キンギョソウのおすすめ品種
‘ロケット’シリーズ
ロケット品種は、高性品種(80〜100cm)で、切り花に最適です。花色が豊富で、花穂が長く立派に育ちます。
‘ソネット’シリーズ
ソネットシリーズは、中性品種(40〜50cm)で、花壇植えに適しています。分枝性が良く、ボリュームのある株に育ちます。
‘キャンディトップス’シリーズ
キャンディートップスは、四季咲きのわい性種(20〜25cm程度)で、 既存のわい性種に比べ、花穂が大きく、分枝性がよく、茎が非常に硬いので、綺麗に作りやすい品種です。
コンテナや鉢植えでも育てやすい品種でもあります。
‘トゥイニー’シリーズ
‘トゥイニー’シリーズは、半八重〜八重咲きのバタフライ咲きで、エレガントな花が特徴です。
株がこんもりとまとまり、水彩画のような優しいニュアンスカラーの花を咲かせます。
花持ちが良く、切り戻すことで繰り返し花を楽しめます。
寒さに強く、花壇や寄せ植え、切り花に適しています。
キンギョソウの楽しみ方
花壇で高低差を演出
キンギョソウの高性・中性・矮性品種だけを組み合わせて、美しい高低差のある花壇を作ることができます。
切り花として
花持ちが良く、花瓶に活けると室内を華やかに彩ります。
蕾の状態で切っても咲き続けます。
コンテナガーデンで
矮性品種は寄せ植えに最適で、他の草花と組み合わせて美しいコンテナガーデンを楽しめます。
キンギョソウ栽培Q&A
- Q花がらは摘み取った方がいいですか?
- A
こまめに花がらを摘み取ることで、次々と新しい花が咲き続け、長期間楽しめます。
種を採りたい場合は一部残しておきましょう。
- Q冬越しはできますか?
- A
暖地では多年草として冬越し可能ですが、寒冷地では一年草扱いが一般的です。
防寒対策で越冬を試みることもできます。
- Q摘心は必要ですか?
- A
草丈20cm程度で摘心すると、分枝して花数が増えます。
高性品種で切り花にする場合は摘心しない方が良いでしょう。
キンギョソウの豆知識や名前の由来
「キンギョソウ」の名前は、花の形が金魚に似ていることから名付けられました。
英名の「スナップドラゴン(Snapdragon)」は、花を横から押すと竜が口をパクパクと動かすように見えることに由来します。
また、「アンティルリナム(Antirrhinum)」という学名は、ギリシャ語の「anti(似ている)」と「rhinos(鼻)」からなり、花が動物の鼻に似ていることを表しています。
古代ギリシャ・ローマ時代から栽培されていた歴史の古い花で、中世ヨーロッパでは魔除けの花として信じられていました。
花の形が竜の口に似ていることから、邪悪なものを追い払う力があると考えられていたのです。
日本には明治時代に渡来し、「金魚草」として親しまれるようになりました。
当初は主に温室で栽培されていましたが、品種改良により露地での栽培が可能になりました。
ヨーロッパでは「口の大きな花」という意味で「Lion’s mouth」とも呼ばれ、子供たちが花を押して遊ぶ姿が各地で見られます。
花を押すと口がパクパク動く仕組みは、下唇の弾力性によるものです。
昆虫が蜜を求めて花に止まると、その重みで下唇が下がり、雄しべと雌しべが現れる仕組みになっています。
花言葉は「おしゃべり」「でしゃばり」「おせっかい」で、花が口をパクパク動かす様子から生まれた愛らしい意味です。
また、「傲慢」という意味もありますが、これは堂々とした花姿からきています。
キンギョソウのまとめ|年間栽培スケジュール
月 | 作業内容 |
---|---|
2〜3月 | 種まき準備・育苗・播種(春播き) |
4〜5月 | 植え付け・摘心・施肥・支柱立て |
6〜7月 | 開花・花がら摘み・水やり・病害虫対策 |
8〜9月 | 継続管理・種まき(秋播き)・夏越し管理 |
10〜11月 | 植え付け(秋播き苗)・施肥・防寒準備 |
12〜1月 | 防寒・水やり調整・種の採取・保存 |
- 日当たりの良い風通しの良い場所での栽培
- 水はけの良い中性〜弱アルカリ性土壌での管理
- 適期適量の施肥による健全な生育促進
- 定期的な花がら摘みによる長期開花の維持
- 品種特性に応じた支柱立てと摘心作業
キンギョソウは愛らしい花形と豊富な花色で、長期間にわたって庭を彩る魅力的な草花です。
地中海沿岸原産でありながら日本の気候にも良く適応し、現在では用途に応じて選べる豊富な品種があります。
比較的育てやすく、切り花としても楽しめる性質は、ガーデニングの大きな魅力です。
キンギョソウの金魚のような愛らしい花で、華やかで楽しいガーデンライフを始めてみてください。
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